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2020年10月15日木曜日

夏の読書記録


この国の男の健康寿命なるものの平均は73歳とのこと。このブログを更新しなかったら「生きていたのか! 身体のどこかが具合悪くなったくらいなら良いがと思っていた」と優しい声をかけられた。更新が止まったのは不精が昂じたこともあるが、なによりも付き合いが激減し、近況を知らせる相手の顔が見えなくなり書く意欲が下がったためである。
しかし、今からでも友人を増やすべく再開することにした。

この8月は暑かった。雨の多かった7月が終わると急に気温が上がった。そのためたちまちくたばった。生き延びるのが大事と判断し、ひたすら休んだ。休んで横になり本を読んで暇をつぶした。内容はともかく、物理的に重たい本が多く前腕XX筋のトレーニングをしているようでもありました。
一昨年読んだ『星路航行』はとてもよかったので手にとってみた。実際にあった相撲の取口・展開の記録がどれほど残っているのか分からない。それでも生き生きとした描写からは、歓声のなか身体がぶつかり汗が飛びちるさまが目の当たりに浮かんでくる。志ん生の人情もののような語り。下積みの民衆からの眼差し。妙義基地反対闘争を調べに行って歩いたところも舞台なので興味深く読んだ。

平野啓一郎『ある男』
加害者家族バッシング。一気に読ませる。しかし、どうして大事な展開を担うのが語り手に好意をよせる綺麗な女性でなければならないのか。

黒川博行『桃源』
上方漫才を聞いているような会話で進む警察エンタメ小説。気晴らしには最高。

ベン・マッキンタイアー『KGBの男』
寝返ったKGBロンドン支局no.2とMI6のやり取りのノンフィクション。同じ著者が書いたシチリア上陸作戦やノルマンディ上陸作戦の欺罔工作を扱った作品
よりも面白かった。


フィリップ・クローデル『灰色の魂』
第一次大戦、前線に近い田舎で起きた殺人事件にかかわった警察官(ガクはない筈なのに語彙も語りも豊か)の回想。フランスで反響を呼んだ作品だというが、どこにそうしたものがあるのか分からなかった。

フランソワ・チェン『ティエンイの物語』
これは感銘しました。

大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』
あっという間に読めた。個々の戦闘の戦術と戦争の最終目的に関わる戦略とのあいだに、戦術を戦略につなぐ「作戦術」の次元をおき、戦略目標にとって作戦を配置したことが、戦車など高性能の武器を有したドイツ軍にたいしてソ連軍が勝利した鍵であったという。「現代の野蛮と呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す」とあるのだが、失われた戦車の数は示さ殺傷された人員の数、つまり戦争の惨禍は示されていない。

その他、コロナ禍に関わって読んだもの:
M.デヴィス『感染爆発』
H.ウォルフ『パンデミックの時代』
クロスビー『史上最悪のインフルエンザ』


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