散歩をしているとき保育園の子どもたちとすれちがった。どの子もかわいい顔がどことなく満足した表情をしている。すると保育士さんの弾んだ声が聞こえた。
「ねぇみんな! 今日はよかったね! たくさん消防車を見たよね! 救急車も見たよね!」
そういえば先程いつになく何台もの消防車が飛んでいく音が続いていた。
彼女の言葉は大人同士の話ならいささか品の悪いブラック・ユーモアではないか。私は保育士さんの言葉に目くじらを立てていた。
しかし子どもたちにとって消防車が何台も目の前を走っていくのは、確かにワクワクすることだろう。その気持ちを受け止めしっかりと共感することは少しもブラックではない。
問題はむしろ、私がすっかり小言幸兵衛の感じ方になっていたことにあったのだろう。歳をとった。