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2025年12月21日日曜日

歳をとりました


 退職すれば楽になる。そんなことはない。老人・高齢者の圧倒的多くは働き続けている。そのほとんどは現役時代より悪い仕事環境で、ずっと低い賃金で働いている。仮に退職金や年金が得られても、それだけではまともな生活ができない。働かざるを得ないのだ。

いくつもの偶然からそうした重しから今のところ僕は免れている。しかしそうした僕にも身体が老い、健康の衰えが確かに進んできた。

20年も前から立ちくらみのような目眩によく襲われていた。その頻度がこの春になって急に高くなった。立ち眩み型の目眩の場合は、アタマの中が丁度おもちゃのスノーボールのようになる。プラスチックなどの球状透明の容器の中に小さな人形や家、今だったらクリスマスの光景(なぜそんなものが良いのか分からないけれど)があり、容器を少し動かすと中に入っている細かな白粉が雪のように舞い上がってカワイイ・ステキというやつ。アタマの中がこのスノーボールで少し動かせば雪が舞い上がるようにフワフワしてしまう。少しも素敵でもなく気持ちが悪い。目の周りが回るのではなく、ドタマの中がフワフワするのだ。

そんなタイプのめまいが続いていたのが、この春からは身体全体のふらつきに拡がってしまった。身体全体がふらつく。飲みすぎて足がもつれるといった感じ。それがキツくなると脚を横に踏ん張るようにしなければとても歩けない。それでも傾きタタラを踏んだりする。

何か困った病に取り憑かれたのかと思い、耳鼻科へ行く。

説明:三半規管の耳石の動きが乱れ、それに脳が反応して目眩になる等々。およそこのような説明。何でも Persistent Postural-Perceptual Dizziness 8持続性知覚性姿勢誘発目眩)なる呼称もついているという。立派な名前がついていても、発症のメカニズムはおよそわかっていても、だからと言って世界的に広く認められた処方があるわけではないらしい。訪れた耳鼻科の処方もまちまち。

分かったことの第1:低血圧、低体温、最大酸素接種量 VO2max (持久力の指標とされるやつ)が低い人はなりやすい。第2

:発症するきっかけ・引き金は気圧・気温の急変(特に急降下)、そしてストレス。

僕は低血圧気味で、時とすると上が100を越えず、下も60を切ることがよくある。体温も低い。子どもの頃に一度37℃の熱を出し随分に苦しんだ微かな記憶がある。以来、風邪で悪寒に震えていても36度台を越えたことがなく、至って鈍い。加えてどうやらVO2max の数値が年齢平均よりも明らかに低い。大腿四頭筋もハムストリングスもそれなりに鍛えているので、電動バイクを追い抜いて坂道を登ったりすることもあるけれど、息切れがひどい。

去年10月、学生時代からの親友が2年間の闘病の末に亡くなった。僕より若く、物事の洞察も深く、批判も鋭い実に優れた方だった。多くのことを彼から学ばせてもらっただけでなく、私生活でも色々と支えてもらった。一年が過ぎても悲しさは去らない。

暮れには弟との低劣な相続裁判で、ややこしい法解釈をねぐった裁判官の手抜きのためすってんてんに敗れ、大金出費を強いられた。これだけでも心理的負担が重かったところに、人生で何度もあり得ない辛い出来事がこの他にも重なった。絵に描いたようなストレス。

その気になってサイトでは見ることもない新聞各ページ下段の広告を見ると、「めまい」についての広告はいやというほどある。仲間は多いのだろう。つまり歳相応。
せいぜい居眠りでも良いから睡眠時間を増やし、少しでものんびり過ごし、この目眩と付合っていきなさいということらしい。

もっとも良いこともあった。やれCTだMRIだと、優雅にも先進国医療の特権を享受したところ、血管や脳灰白質の萎縮度は57歳の平均とのこと。検査数値が良いからといって、実態が伴っているかは怪しいものだが、しかし悪くない気分になる。どうやらこうした検査は、医師が「患者様」(とこの頃は言うらしい)を脅すか煽てるかするためにあるのかもしれない。