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2008年8月30日土曜日

引越しと別れ



本の整理を始めたのは、近いうちに都内に引っ越すことになったからだ。

住まいは狭くなるため、色々な物を捨てなくてはならない。場所をとっている本は勤め先の研究室に一時的に避難させ、退職までの数年間で見通しを付けることにした。やっかいなのは、それなりのカネを工面して買ったいくつもの家具を処分しなければならないことだ。もっとも、よくよく見ると、人に残すようなしっかりした出来のものは殆どない。「長年世話になりました」と別れることにした。

辛いのは、自分自身にかかわる物である。色々なな記憶がまざまざと甦ってくる細々としたものども。懐かしさ、楽しかった時。物を捨てたからと言って思い出がなくなるわけではない。とは言え、まだ気持ちの整理のついていない思い出も少なからずある。辛い。そして、それだけではない。「どうしてこんな物をとっておいたのか」「そのうちやろうと思っていたものがこんなに」、それらの物が放って置かれた時間を考えると、痛烈な批判が突き刺さってくる。

そして第三には、これからの人生のことだ。やりたいこと。まだ、やるべきと考えていること。それだけでも随分に広く多い。この歳になっても少しも諦めていない自分がある。しかし、冷静に考えれば、残された時間にできるであろうことは厳然と限られている。「そんなものまで抱えていたら結局何も出来なくなるよ」と、賢い我が連れ合いは強く言い放つ。そうだろうと思う。問題は、これからの人生で、いったい何をすることができる条件をあるのかの見通しが付けられず、また本当に何がやりたいのかを決断することができていないことあたりにあるのだろう。