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2011年10月5日水曜日

木を読む


林以一『木を読む 最後の江戸木挽き職人』を読んだ。とんでもない本だった。このところ樹木にのめっている僕は一気に読んでしまった。


この林さんは1929年の生まれで、戦後すぐから深川にあった木場で働いていらした方。60歳になってもまだ一人前と言いにくいらしい世界で、今でも現役で働いていらっしゃるらしい。


チエーンソーなら2枚しか取れない材から、大鋸で4〜5枚を切り出したり、直径2mもある材を数メートル挽いても数ミリの誤差も出さないという。木を見ただけで「これは千葉、あれは栃木」などとその産地(出というらしい)が分かるとこともなげに語る。そんな経験者でも、難しいのは良い杢を出すためにどのように切るかを決めることだと言う。さもありなんと思う。


困ったことには、この大鋸による木挽きの技術を受け継ぐ人が殆どいないらしい。この本に10年前に出会っていたら、職を投げ打ってこの世界に飛び込みたくなるような危機だ。


そう言えば、ときどき行く知り合いの家は50年代末に建てられた古屋だが、その二階の天井は、当時「もうこんなものは造れない」と言われたものとのことだった。改めて見上げると、なるほど素晴らしい杢の材が使われているし、欄間などの細工も素晴らしいものだった。