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2011年11月21日月曜日

疲れる

親しい同僚がひどく疲れた顔をしていた。尋ねると、卒論を指導している学生から一時帰郷すると聞かされたという。身近で不幸があったためではない。3月になってからでは就職後に着るスーツを買う時間が取れないので、今のうちに買いたいので親元に帰ると言うとのこと。11月も下旬になっている今は、卒論も追い込みの時期である。余りにおかしいので、少し問いただすと実は親と家族旅行に行くためと打ち明けたという。


「君たちの人生の知的水準は卒論の水準で決まってくる。君たちは卒業後の人生でおそらく卒論のような論文に取り組むことはない。だから卒論は卒業後には役に立たないと思うかもしれない。しかし、第一に自分で何が問題か、問いをきちんと立ててること、第二にその問いに答えるために、先ずこれまで明らかになっていることを踏まえたうえで、第三に自分が新たに立ち向かっている問題について調べ、情報を整理し、第四に自分の問いに対する答えを探ること。そして第五にこの問いに対する答えを誰にも分かりやすく書いて伝えること。こうしたことは、大抵の仕事でも求められる作業と変わらない。

仮に卒論が社会に出てからに仕事に直接に役立たないとしても、卒論に取り組むことによって初めて君たちは大学での勉強の全体を自分の頭の中にまとめあげて自分のものにすることができる。卒論に一生懸命取り組んだ先輩たちは、書き終えた後では顔つきも変わって卒業していったし、その後もそれぞれの仕事を生き生きとしている。自分と自分の人生を大事にしたかったら、今ここで卒論に全力を傾けよう!」


こんな激励を僕も学生たちにしてきた。この同僚は「卒論なんか大学の先生たちの嫌がらせくらいしか考えていないんでしょう。大学も馬鹿にされたものですよ」という。疲れさせてくれる話だ。それにしても20代前半の若者が親と家族旅行とは。そんなものに付き合う若者は単に幼稚だけなのか。それにして、親もほとんどお病気ではないのか。ひどく疲れる。