2012年5月1日火曜日

セザンヌ展とエルミタージュ展

国立新美術館のセザンヌ展とエルミタージュ展に行った。ここも老人ばかり。    セザンヌは88点。オルセーにある「首吊りの家」、99年のリンゴとオレンジ、ワシントンのサント・ヴィクトワールにボストンの「赤肘掛け椅子の夫人」など有名作品が来ていて、見応えはある。彼の理屈っぽさはうるさい程によく感じられた。彼は、自然を球と円柱、円錐で描けと言ったとされている。しかし今に至る人気の秘密は、すぐれて安心できる構図にあるのではないか。むしろそれは立体の構成ではなく、平面の浮世絵にもある古典的構成だろう。
しかし、展示の順序は訳の分からないものだった。作品を初期と晩年の間に風景、身体、肖像、静物と4つのジャンルに分け、それぞれを1882年はさんでパリとプロヴァンスで分けている。4つのジャンルは誰にも分かるものであり、また20前後の作品をジャンル毎にまとめたところで何かが見えてくる訳でもない。むしろ年代順に並べ、作品の作成地を明示した方が良かった。
朝からかなり混んでいたが、ほとんどの人は1つの作品に5分もかけておらず、人が停滞しているのは部屋毎の解説の前くらい。先日のボストン美術館日本展の絵巻物で苦労したようなことはなかった。
エルミタージュの方は、「83作家の作品、全89点」で「400年にわたる西欧絵画の歴史をたどる」というもので、いやはやであった。16〜18世紀のものはヴァン・ダイクとレンブラントを除くと殆どがC級。ただ、女性であることを売り込んだはしりのエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランMarie Élisabeth-Louise Vigée Le Brun、アンゲリカ・カウフマンMaria Anna Angelica Katharina Kauffmann の自画像があったのは面白かった。

 新しいところでは、シスレー、ルノワール、モネ、セザンヌ、ボナール、マチス、ピカソといったくらい。





それにしても観客は多かった。セザンヌ展は先日、入場者数10万人を突破したという。入場料は大人1500円なので、売上げは1億数千万円になる。エルミタージュの方も会期は7月中旬までなので、かなり儲けることだろう。新自由主義の荒波の中で、世界中の美術館がどこも経営に四苦八苦しているという。我ら日本の団塊老人たちは、世界の美術館の経営難克服に力を合わせて協力しているということになるのだろう。
初めて空間体験した国立新美術館の建物は、正面全面を大きく波打つガラスで覆った中に地下から3階までの繋がった空間を作り、そこにロビーをおくという実に開放的な格好になっている。しかし、「誰がガラス窓を掃除するの?」「空調にいくらかかるの?」と聞きたくなる代物だ。西欧のミュージアムには、門から玄関までを歩くしかない現代の観光客には遠すぎるところに建っている前代の王侯貴族の冷暖房もない城館におかれているものが少なくない。黒川紀章のデザインは、現代世界における上位1%=現代の王侯貴族、先進工業国の人々の欲望に応えた城館なのだろう。