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2013年5月9日木曜日

誰が得をするか

8日の「人民日報」に、沖縄の帰属問題(琉球問題)は「再議できるときが到来した」という論説が載ったという。なぜこのタイミングでこのようなどぎつい論説が出たのか。「人民日報」といえば中国共産党の機関紙である。

その前日7には、中国銀行が北朝鮮の外国貿易関係銀行との取引を停止したと報じられた。北朝鮮にとってこれはかなりの打撃になるだろう。ところで、日本では「北朝鮮との関係で中国は国際社会と足並みを揃えたのに、なぜ日本に対しては無理を言募るのか。やはり日本をバカにしているからではないか」といった受取り方もあるようだ。

ポイントはこの「人民日報」論文は、6日にアメリカ国防省が議会に提出した中国の軍事に関する年次報告の中の記述、すなわち中国は尖閣諸島に関して国際法にそぐわない straight baseline を不適切に引いていると記したことに対する反論として出されていることだろう。

この国防省報告では、日中の領土問題よりも、米国政府などのコンピューターが中国政府・軍から発するサイバー侵入を受けたことの方がずっと重く扱われている。このことに対する中国政府の反論もなされてはいるが、「人民日報」で論説を構える程のものにはなっていないようだ。

しかも領海基線がおかしいとの指摘に対して、沖縄の帰属も再議しろとの主張である。この「不釣り合い」はなぜか? 7日の対北朝鮮金融制裁を含めて考えると、米国が最も気にしている北朝鮮については歩調を合わせ米国政府を満足させておいて、日本との領土問題で強硬に出ることを容認させるといった暗黙の駆け引きがあると考えたくなる。

米国省は国省とは異なり、一貫して日中の領土問題で米国はいずれかに肩入れする特別の立場をとることはないとしている。それにまた「沖縄にも中国が攻めてくる」となれば、沖縄から米軍基地は出て行け等と言われなくて済むようになるのではないか、とくらいに国防省(軍)サイドは思っているのではないか。米中両国の軍レベルにとって尖閣=領土問題が荒れることは、仕事をふやす上でも願ってもないおいしい話しなのだろう。