2013年5月4日土曜日

「狼が来た」のか?

憲法記念日を前に何人かの友人から現在の改憲動向を批判するブックレットを送ってもらった。憲法を支えるのはつまるところ普通の人々だと信じている僕は、義務教育修了レベルで読めるこの種のBLが出ることは良いことだと思っている。そしてまた、儲けにもならず、研究業績として評価もされないこうしたBL作りに力を割くことには「忙しいだろうに偉いなぁ」と感じ、少なからず敬意を払ってもいる。

(と行儀正しく挨拶をしておいて)しかし、首を傾げてしまったのは、もらったBLの2つが、昨年春に出された自民党の改憲草案批判にかなりのスペースを割いていることだ。問題になっている96条改憲の先に来るのは、この草案に示されたような明文改憲だと想定しているらしい。そうだろうか?

昨年の自民党改憲草案は、9条改憲だけでなく、「天賦人権説に基づく規定を全面的に見直した」として、「公益及び公の秩序」を人権より優越させ、個人の尊重(13条)を「公益及び公の秩序に反しない限り人として尊重する」と変えたり、「家族は互いに助け合わなければならない」としたりするなど、時代錯誤だと思われる代物だ。


昨年春これが出されたのは、近づいた総選挙に備えて、政権交代によって右に寄る格好で痩せ細ってしまった同党の支持者たちの意識に合わせて同党の2005年「新憲法草案」を変える必要があったためだろう。こんなレトロ趣味のもので改憲多数派が作れるとは同党の指導部も思っていない。その証拠に、総選挙前にはサイトのトップから直ぐに見ることのできたこの草案は、年が明けるやすぐにトップページから外された。それも党の政策の概要を紹介する「政策」欄ではなく「党の政治活動の模様紹介、総裁など幹部の記者会見、部会や各プロジェクトでの活動などをニュースや動画・写真伝える」という「自民党の活動」のページの中の、「自民党の今がわかる、最新トピックス」を紹介する「コラム」欄という片隅に押込められてしまったのだ。


自民12年改憲案が本命ではないとぼくに再確認させてくれたのは、昨日5月3日の「日経」だ。その社説は、憲法で「家族のあり方を規定しようとするのは近代憲法とはちょっと違った発想だ」と釘をさし、「明文改憲だけで国家がうまく回るわけではない」としている。この国の経済エリートの意向代弁を使命としている「日経」にそっぽを向かれるような改憲を自民党がすすめるわけはないではないか。

復古的改憲案を叩くのはやさしい。そして50年代の明治憲法復古志向の改憲が原像のように焼きついている年輩の護憲派市民(9条の会の集まりの高齢者比率は平均7割を超えると言いう)には、「狼がまたやって来た!」と分かりやすく、また奮起を促す効果もある。しかし、遠吠えする狼ばかりに躍起になっている間に、狐などが入り込んで食い荒らすのを見逃すようでは間が抜けた話しだ。