About

2013年6月26日水曜日

なぜ今、保護申請排除なのか?



自分でもよく分からない成り行きで、生活保護法改正と生活困窮者自立支援法案に反対して、大学研究者が声を上げる運動の連絡係をしていた。専らEメールで呼びかけて反対の共同声明への賛同を集め、これを社会的にアッピールしていこうという運動だ。殆どがEメールをいじるだけの無精な作業なので何とかこなせるだろうと思って始めた。それが嬉しい(?)予想外れ。そもそもが会期末が迫る中での国会審議を相手にすることで、この状況は絶えず変わっていく。そこにどさどさと賛同メールが寄せられてくる。半日以上放っておくわけにも行かない。3時間おきに処理していると、他のことをする余裕がなくなってしまった。

という次第で、その間に書いた短文を記録のために載せておく:
-----------------------------
関連2法今回の2法は不正受給を減らすためと喧伝されています。しかし、こうまでして減らすことが目されている不正受給はどの程度あるのかといえば、過去最悪の2011年度でも約173億円(3万5568件)です。たかだかこれだけの額のために保護申請の敷居を高くするという制度の入口を狭める。これは異様なことです。不正受給を減らすのが目的なら、審査を厳格にして対応すれば済むことでしょう。

院内集会での布川さんの報告で、僕は驚くべき数字を知りました。
相対的貧困線(平均収入の半分以下の収入)は97年の約150万円から、2009年には約125万円へと下がっている!(このこと自体、貧困が広がっていることを意味しています)。にも拘らず、そこに属する人の比率:相対的貧困率は同じく約14.5%から約16%へと上昇しているというのです(かりに97年レベルの150万円に相対的貧困線を引上げたとしたら一体、その率はいくらになるのでしょうか?)
貧困の定義を機械的に「平均収入の半分以下」とするとしても、この惨状です。

今回の生活保護法「改正」案と自立支援法案の狙いを見るには、貧困の拡大・深刻化の現状を掴まなければならないと、改めて思いました。そうして翌15日、「協同総研いのちとくらし」のシンポジウムでの後藤道夫さんの報告から、多くのことを学んで次の文を書きました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この国の10人に1人(約1185万人)が生活保護基準未満にいるのに、そのうち約15%(215.5万人)の人しか生活保護を利用していません。他の生活困窮者(約970万人)の多くは、厳しい「水際作戦」や「自助努力もできない困った人」といったレッテル貼りを避け、「生活保護は自分と無関係」と思い込み、自らを受給者から区別し、「棲み分け」の中でひたすら我慢を重ねています。
マスコミが煽る生活保護叩きに強く同調し、最も激しくバッシングに加わるのはその人たちだと思われます。

しかし、2割失業社会がやってきて、年末派遣村など反貧困の運動が進むなかで、生活保護の利用者数はじわじわと増えています。96年には、世帯利用率1.4%、人員利用率 0.7% だったのが、15年後の2011年には、世帯利用率3.1%、人員利用率 1.6% へと急増しているのです。

「企業が世界で一番活動しやすい」社会作りが進み、働く者の生活苦が続けば、これまで生活保護を受けず我慢に我慢を重ねていた人たちも、「それなら私たちだって」と、生活保護を求めるようになるでしょう。
その時、生活保護バッシングに現れたエネルギーが向かう方向は、必ずやが逆転します。

その事態を未然にくい止めるために、何が何でも生活保護の利用率を引下げる。
これが支配層の危機感からくる結論です。

昨夏成立した社会保障制度改革推進法は、「自助・共助」を社会保障に優先させるという憲法25条を解体する方向を打ち出しました。これにそって生活保護制度の根底を覆そうとするのが、今回の生活保護法改正案であり、自立支援法案です。 

今度の生活保護法改正案が閣議決定され国会に出たとき、僕はあの橋下発言の成り行きばかりを見ていて、恥ずかしいことにこの問題に気づきませんでした。しかし、橋下を支える人々が少なからずもっている差別感覚には、生活保護バッシングなどの分断キャンペーンで強化された意識に通じるところがあります。<改憲ー女性蔑視ー差別ー生活保護解体>、これはワンセットで捉える必要があると感じます。 


明文改憲の政治日程はまだ先であるのに対して、今回の2法は、既に現実となっている生活困窮者の差別と排除を永続的な構造にするという、差し迫った現実の攻撃です。これら2法案が通ったら、一体この日本社会はどうなるでしょうか?
生活保護が崩されてしまっては憲法9条は守れません。 

18日から2法案は委員会審議入りしました。21日の参考人質疑までは日程が決まっています。しかし、採択日はまだ決まっていません。そして会期末は26日です。

力を合わせて廃案に追い込みましょう。