「おばあちゃん、何年生まれですか?」と聞かれ、「私は10年生まれ」と答え、相手が「昭和10年ですか!」と驚くと、「大正10年よ!」と言って再び驚かせるのが得意だった。知り合いの医者は、「年寄りは困る。自分の誕生日が何年かは分かっているくせに、自分が何歳かが分からない人が多い」と嘆いていた。彼女も自分の年齢はよくわからないようだった。
二つも三つもの元号にまたがって何年たったかと年数を数えるのは実に厄介だ。そう思うのは私だけではない。その証拠に、この国の手帳には必ずといってよいほど年齢早見表なるページがついている。この頃ではスマホにもそんなアプリが初めから入っているらしい。役所や銀行、郵便局の窓口にはどこでも西暦と元号の対照表が常備されている。