
キリスト教については、殆ど知らない僕なので、ユダヤ教とキリスト教、ロシア正教とギリシャ正教の異同をめぐって繰り広げられる人々の苦労などについては皆目分からなかった。読んでいて神をもつ信仰の堅苦しさ、息苦しさに呆れもしていたのだから、神への信仰がこの物語の主要なテーマでもあるので、読んだといっても僕は半分も作者のメッセージは理解できていないのだろう。半分はイスラエルを舞台にしていながら、アラブ、イスラムの人々との関係が殆ど出てこないという不満はある。それでも、もう一度読みたくなる本だった。何故だろうかと考えている。第二次世界大戦でポーランドなどであったことの重さ、その中で貫かれる人間の信頼関係と愛情の尊さ等など。あれだけの侵略戦争をしてきたこの国に、侵略の現場での経験に根ざした小説が殆どない(少なくとも僕は知らない)ことも改めて痛感させられた。
こなれた日本語に訳してくれた訳者にも感謝。