会ったことは勿論ない。しかし、無性に寂しく悲しい。もう二度と彼女の新しい文章や絵と出会うことはできない。涙が出る。
初めて読んだ本が『100万回』でないことは確かだ。短いエセーのようなもの。涙が出る程に笑い転げた。飾りっ気がなく、鋭いけれどユーモアがあり、きついけれど重苦しくもない。何よりもの魅力は本音だけしか書かれていないことだったかもしれない。

新聞報道には「女性に人気があった」とか、「シニカルさが魅力」などとある。アホとしか言いようがない評だ。人気が女性に偏っていたとしたら、それはこの国のオトコ達のジェンダー・バイアスの強さを表すものでしかない。彼女のメッセージがシニカルと感じるのなら、それは物質的に豊かといわれるこの国の社会の根深い貧しさに無頓着であることの自白でしかない。それ程にこの国のオトコ達はアホではないし、彼女のファンの多くはシニカルさを楽しんでいたのではなく、彼女の指摘の鮮やかさ、社会描写の的確さや鋭さに共感していたのではないかと思う。
殆ど10歳年長なのだが、同世代の姉に先立たれたような寂しさがある。しっかりした格好のよいお姉さん。72歳で逝ってしまうとはやはり早すぎる。