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2010年11月7日日曜日

奇跡の時

2年前に越して来たアパートで知り合った友人にいただいたSt.Julien,2000 を、とうとう新しい友人の皆さんと一緒にいただいた。あと少なくとも10年は熟成させたい代物。セラーがないので、駄目にしてしまうリスクを怖れ、開栓した。

この僕にとっては、まず一生飲むことはあるまいと思われるぶどう酒は、熟成期間が最低10年、20年後くらいが最も期待でき、35年辺りが限度と言われるような代物とのこと。「私は味が分からないから」と鷹揚な友人は、「それは夢の多いワインですね」と言う。しかし、20年も待っていたら、ぼくはもうしっかりとしたジジイになっていて、味も碌に分からなくなっているかもしれないし、そもそも生きていないかもしれない。「いつまでも冷蔵庫に入れておく電気代とスペースがもったいないからではない。今しか飲めないから飲むのだ」と熟成したものを飲みたい自分を言い聞かせ、かくて我が人生の奇跡の時となった。

日頃、千円以下のぶどう酒で、それに合う程度の素人料理で僕は満足してきた。100ポイントをトップクラスとすれば、30ポイントのぶどう酒に、低価格・短時間で作れる30ポイントの料理で、これが我が身と生活相応と考えて来た。それが突然に100ポイントぶどう酒である。急に料理の腕が100ポイントになる訳ではない。それなりに材料に投資し、奮励努力したが、牛にオレンジ・ヨーグルトをベースとした料理は、タマネギの分量が多過ぎたため、高く見ても60ポイントに留まった。無念。しかし、さすがにサン・ジュリアン君は、へぼ料理が相手でも際立って最後まで華麗な変化を楽しませてくれた。

うん、それにしてもフランスくんだりから、おそらくは飛行機で運ばれた酒を飲む。これは何と言う贅沢だろうか。糞XXXな僕は、「このような奇跡に出会えたのだから、せめて良い仕事をしなくては」と改めて思った次第。