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2011年8月25日木曜日

「巨大津波を予測していた」報道の狙い

福島第一原発事故についての政府事故調査・検証委員会によると、東電は福島第一に10mを超す津波が来る試算を既に08年にしており、経産省原子力安全・保安院にも報告していたとのこと。


http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110824-OYT1T00991.htm


http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110825k0000m040070000c.html


これで、津波の高さを「想定外」としていた“言い訳”も、東電の嘘でしかないこと、また安全・保安院も津波対策について東電と共犯であることがはっきりした。


しかし、釈然としない。なぜ今この時点でこのことが報道されるのか。僕には、この時点を選んで報じられたことは、福島第一原発事故(その核心は大規模冷却剤喪失)の原因が、津波以前の地震にあることが多くの人によって明らかにされてきたことに対する目くらまし、事故原因地震説に対する牽制、津波原因説の再強調であるように思われてならない。


例えば、原発推進派の「産経」も既に5月25日に、「津波ではなく地震の揺れによる冷却系破損の可能性」を報じていたし、「地震直後の圧力容器破損」の可能性を示すデータが東電公表資料に含まれていることは共同通信も報じていた。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110525/dst11052520070022-n1.htm
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052501001193.html

この東電公表データを分析した元原発設計技師の田中三彦さんは、炉心冷却系配管の破壊による
大規模冷却剤喪失事故の推定を説得的に唱えている。東電からはこの地震原因説にたいする説得的な反論はなされていない。

http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1159
http://cnic.jp/files/445p1-5.pdf
石橋克彦編『原発を終わらせる』岩波新書1315、2011年、第1章




地震が事故原因だとすると、福島第1と同じ「マークⅠ型」「マークⅠ改良型」の原発10基(東通原発1号機、女川原発1号機、2号機、3号機、浜岡原発3号機、4号機、志賀原発1号機、島根原発1号機、2号機、敦賀原発1号機)はすべて欠陥原発であることが確定し、運転中の島根2号機は直ちに停止されるべきことになる。それだけではない、他のモデルの原発についても少なくともM9地震に耐えうるかの検証が求められ、これにパスできる原発はどこにもないことになる。


事故原因地震説は、原発推進派にとって最悪の道をとらせることになるのは必定だから、この際は「想定外だった」と言い募ることは止め、「予想はしていたが対策が遅れた」という線で防御を固めようということだろう。


予測していて然るべき報告もしなかった東電と、まともな指導措置を怠った安全・保安院との間で責任のなすりあいが暫くは続けられ、分かりやすい「決着」として担当者などが処分されるかもしれない。例の、やらせメール事件では処分された経産省の次官らは退職金を1千万円以上上積みされて更迭され、予定されていた天下り先へ移っている。やっとその辺りまでシナリオが固まったので、この時点での報道となったということだろうか。



http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011081302000029.html



今日、国立環境研究所は、ヨウ素の13%、セシウムの22%が東日本の陸地に拡散されたという分析を公表した。


http://www.nies.go.jp/whatsnew/2011/20110825/20110825.html