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2008年6月4日水曜日

木を切る



今住んでいる団地に住むようになって25年以上になる。
約20年前だろうか、まだ殺風景だった団地の周りの植え込み部分に柑橘類の苗を植えた。冬から春にかけて食べるハッサクや甘夏の種を蒔いていて、それがベランダの鉢で育ったものだ。地面に降ろすとそれは随分に大きくなり、5年以上前から実をつけるようになった。何とレモンである。肥料もやらず、大して剪定もしないので実がならない年もあった。その間にも植え込みには丈の低いツツジ等が植え込まれていった。ツツジばかりの植え込みの中に3mにはなるレモンの木がある光景は、ちぐはぐといえばちぐはくだったかもしれない。しかし、自分が植えたこともあり、見るたびにそっと挨拶するような木であった。

それが根元からバッサリと切り取られていた。どこに持ち去られたのか、枝の一本、葉の一枚も残されていない。新しい切り株が無惨にこちらを向いている。それを見たとき、私の身体のどこかにバッサリと切り取られた感じが走った。野蛮。

一年前にも団地の隅に育っていた5mはあった大きな夏みかんの樹が切り倒された。あれだけの緑とさわざわと揺れめく枝、葉の輝き。それがバッサリと根元から切り倒され持ち去られてしまう。10年以上もかかって大きくなった木だ。それを一瞬にして殺す。後にましな木を植えると言う訳でもない。何とも野蛮なことで胸が打ちひしがれる。