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2013年1月5日土曜日

派兵一般法と集団的自衛権行使解禁へ

明文改憲が当面の政治日程に上ってこないからとしても、憲法を変えようとする政治の動きが止まっている訳ではないようです。、

昨日1月4日付けの日経は、「自衛隊と米軍 協力拡大」「日米同盟強化へ検討」「指針見直し、世界に派遣」の見出しで、海外派兵を随時可能にする「恒久法整備が焦点」とのワシントン=吉野直也記者の記事を1面トップに掲げていました。月末にも予定されている安倍首相のワシントン詣ででは、ガイドライン見直し・派兵恒久法制定・集団的自衛権行使の3点セットの約束がオバマ大統領へのお土産になるとの観察です。

(日経の電子版記事は有料のため省略)

他方、昨日の産経は、「防衛費1000億円上積み 政府・自民方針 現行大綱、中期防は凍結」と報じていました。


年末12月27日の記者会見で小野寺防衛相は、首相からの「米国の新国防戦略と連携して自衛隊の役割を強化し、抑止力を高める」との指示にもとづき、
1)防衛大綱・中期防の見直し、
2)8月のパネッタ国防長官の要請に森本前防衛相が合意していたガイドライン改訂 
3)政府レベルで集団的自衛権の行使容認についての検討

に取組むことを明らかにしていました。

年明けの1月2日と3日に、時事通信と共同通信は「防衛指針再改定」の動きを報じています。


オバマ政権は「軍事と財政はトレードオフ」関係にあるとして、同盟国への軍事負担転嫁を一層に強めています*。安倍政権は、この米政権の姿勢に取り入ることによって「日本を、取り戻す」エンジンを始動させたようです。新聞報道では「日米同盟の深化」とか「安全保障での協力の強化」と評されていますが、しかしその中身は既に一体化している両国軍の態勢の中での自衛隊の負担役割を一段と拡大することでしょう。
「同盟の深化」とか「協力の強化」という表現は、あたかも自衛隊が米軍から独立した自己完結的な軍事組織であることを前提しているかのようで、今すすんでいる事態の実態を理解することの妨げになります。

* Global trends 2025 : A Transformed World, 2008.
Quadrennial Defense Review Report (QDR) 2010. 

参院選挙以降には、早くも派兵恒久法、集団的自衛権行使(国家安全保障基本法)が政治日程に浮上してくることになりそうです。7月の参院選挙でも改憲派はある程度は改憲キャンペーンを張り、それが主な争点にならなくても彼らが選挙に勝てば、こうした法律制定への動きは加速されるでしょう。来年以降にこうした法が成立すれば、この国は憲法第9条があろうと、いつでも国外に派兵し、武力を行使する「普通の国」になるでしょう。

7月の参院選挙では明文改憲は争点になりません。そこで改憲派が勝っても明文改憲が直ちに政治日程に上るわけではありません。しかし、そうなれば少なくとも憲法9条を決定的に骨抜きにする立法が政治日程にのぼることは確実でしょう。明文改憲ばかりに注目して警戒することは、何とも見当外れなことだと思われます。