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2009年9月21日月曜日

国境を越えた高齢化社会へ

 女性の4人に1人、男性の5人に1人が65歳以上の社会になったという。

 もう少し精確にいうと、「女性の高齢者は1659万人で、女性人口に占める割合は25・4%(前年比0・7ポイント増)、男性の高齢者は1239万人で、男性人口の19・9%(同0・6ポイント増)、高齢者人口は前年比80万人増の2898万人で、総人口(1億2756万人)に占める割合は前年比0・6ポイント増の22・7%。ともに比較可能な1950年以来、過去最高となった」とのことであり、「年代別では、70歳以上は2060万人(前年比44万人増)。後期高齢者医療制度の対象となっている75歳以上は、前年比50万人増の1370万人(男性519万人、女性851万人)で、総人口の10・7%となった」とのこと(読売新聞)。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090920-OYT1T00464.htm?from=any

これからも65歳以上人口は2020年までは急増し、その後は概ね安定的に推移するらしい。しかし、総人口は既に2006年をピークに減少に転じているから、高齢化率はしっかりと昇り続け、2015年には26.0%、2050年には35.7%に達し、この国の3人に1人が高齢者となる。もっともそのこと僕はお先に失礼しているだろう。

しかし、「後は野となれ山となれ」という訳には行かないようだ。同じ日の報道によれば、中国の国家人口・計画出産委員会の李斌主任は、新華社のインタビューに答える格好で、中国の総人口は2033年頃にはピークの15億人前後となるという見通しを示している。どうして日中両国の高齢化に係わる報道が相前後してなされたのか、そこには何の相互連絡もないのかもしれない。ところが、内容を見ると色々な憶測が膨らんで来る。

李主任の発言は、まずは今世紀前半は、「労働力人口(15〜64歳)は8億人以上の状態が続くので、就職問題は依然として厳しい」として、80年代以降採られている人口抑制策(一人っ子政策)を正当化するためのものであって、高齢化社会問題に重点をおいた発言ではないらしい。彼によれば、2008年末の総人口は13億2800万人だったが、もし「一人っ子政策を導入していなければ17億人を超えていた」し、08年に初めて3000ドルを突破した1人当たりの国内総生産(GDP)も2200ドル程度にとどまっていたというのだ。

ところが、この発言を同国における高齢化問題を重ね合わせてみると、なかなか深刻はもう一つの問題が浮かび上がってくる感じがする。

中国の労働力人口はいま約9億5000万人とされるが、2015年頃をピークに下がり始める。そして既に全人口の11%を占める1億4000万人以上(日本の総人口以上)が60歳以上の高齢者で、2020年には全人口の17.2%の2億4800万人に増え、2051年には4億3700万人を上回って全人口の30%以上を占めると予想されている(中国国家高齢化問題委員会の調査)という。

2020年頃にも米ドルが基軸通貨だったとして、経済不振の日本のGDPが少し下がって一人当たり8千ドル。中国のGDPは順調に上昇すると仮定して一人当たり4千ドルだとしよう。一方の日本の高齢者率約30%、他方の中国も15%以上と仮定すると、やはり中国はやばい。とても社会が高齢者を支えることはできないだろう。

しかも、沿海部と内陸部の経済格差があり、中国経済全体でのGDP増大にも拘らず、60歳以上高齢者の収入に着目すると、沿海部の省や直轄市等の都市では約3倍なのに、内陸農村部では1.5倍と拡がる一方だという。中国国内では農村部から都市部への労働者流出は8億人という規模だという。しかも、彼らの大半は年金制度からも外されているという。

中国共産党指導部は、一党独裁のツケをこれから嫌という程に払わされることになるのではなかろうか。鳩山首相は、NYで会う胡錦涛国家主席と、東アジア共同体創設で合意する意向だとか伝えられているけれど、うーん、安全保障問題での信頼醸成は良しとしても、これは軽々に進めて良いものか危ういのではないかと、にわかナショナリストの僕は首を傾げる次第。