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2009年6月5日金曜日

世界史未履修問題



中世史を研究している若い方と雑談した。僕はロマネスクの教会建築などに興味があるので、色々と面白い話しを伺った。
そのうち、ついつい共通する仕事である学生教育の話しになってしまった。やはり自分は真面目さから離れられないなあなどと思いながら、あれやこれやと互いの悩みを語り合う。

そのうちとんでもないことが分かってきた。僕が「ウェストファーリア体制といってもキョトンとしている。オスマン帝国もキョトン、ワイマール憲法もキョトン、キューバ革命も朝鮮戦争もベトナム戦争もいつ頃のことか知らない。そのくせ北朝鮮の脅威なんて言っている」等々と、憲法や政治を学ぶ上で、当たり前の前提知識として少しは知っておいてくれないと困る近現代史について学生たちが余りに学んでいないことを嘆くと彼はとんでもないことを言った。「僕のゼミで中世の南イタリアを取上げたんですよ。当時の歴史地図を見せて、“ここにポンペイがあるね”と言ったら、全員がポンペイを知らないんですよ」。歴史学のゼミに希望して入った学生がポンペイを知らないというのだ。

これには仰天した。僕のゼミで尋ねると、「世界史の時間は地理をやっていました」、「カノッサの何とかというあたり迄、やった記憶があります」、「僕のところは、教師が “世界史は広いから、全部やるのは意味がない。ある時代を深く学べば後は自分で学べるって言って、ローマのことしかやりませんでした」などという応えが返ってきた。

そのくせ学生たちに「社会科って学ぶ意味はあるの?」と聞くと、申し合わせたように「過去の過ちから学び、未来に生かす」なんて答えが返って来たりしているのだ。一体、どうなっているのだろうか。