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2010年5月9日日曜日

小選挙区制の黄昏?


イギリスの総選挙で、予想通りに労働党が政権の座を降りることになった。得票率と議席は、保守党が36%で305議席(47%, 96議席増)、労働党が29%で258議席(39%, 91議席減)、自由民主党が23%で57議席(約8.8%)。自民党は前回も20%台をとっていたが、議席を6つ減らした。

二大政党はいずれも議席の過半数を取れなかったので、次期政権は連立にならざるをえない。おそらく保守党と自民党との連立になるだろう。しかし、自民党は比例代表制への転換について国民投票を求めているので、連立協議は簡単には進まないかもしれない。この際、労働党は、スコットランドやウェールズの地域政党、緑の党なども加えて自民党に「左」方向での連立を働きかけるべきだとの主張もあるようだ。そこでも、多数代表方式の小選挙区制から比例代表方式への切り替えが重要な論点になる。

何かと言うと「議会制度の母国」「民主主義の先進」として英米アングロ風を見習うべきモデルだといい、「政権交代がある二大政党制こそが必要だ」と説教してきたこの国の”識者”の方々にとっては、なかなか面白い事態ではなかろうか。

この点で面白い反応を示しているのが公明党だ。公明党は、自民党との長年にわたる連立で「与党の旨味」「大臣ポストの蜜の味」を吸い続け、支持の基盤も同党が上昇期に依拠していた共産党の支持基盤と競合していたような階級・階層から上方移動していた。それが野党に戻ってしまえば与党の旨味もない役立たずになってしまう。そこで野党転落の見通しが明らかになったあたりから、「小選挙区制の見直し」「中選挙区制の復活」を語るようになっていた。今度も英国総選挙に絡め、早速に「二大政党制では民意は集約できない」「民意を正しく反映できる制度をどう作るべきか、虚心坦懐に検討していくべきだ」(山口代表)と言うようになった。

ところが、共産党や社民党からはどうも反応がはっきりしない。社民党は、連立に加わり民主党に引きずられている最中なので、ここに小選挙区制批判を期待するのは無理というものだろう。しかし、共産党までも民主党との将来の連立の可能性に幻惑されているのだろうか。