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2010年5月4日火曜日

歩道を走る自転車




歩道を歩いていると後ろから自転車がベルを鳴らす。そもそも歩道は歩行者のためにあるもので、歩行者優先が原則であることは何も道交法を知らなくても分かりそうなものだ。強い者と弱い者がぶつかったときには、強い者が譲るのが作法というものだろう。僕は筋トレをしているせいか、歩きも遅くはない。先日、裁判傍聴に行ったときにも学生から「歩くの速すぎます」と言われたりした。

ベルが再び鳴らされたので振り返ると、30代の女性がこちらをにらみつけている。「ここは歩道ですよ」と言うと、「ベルが聞こえないんですか!」と応える。「歩道は歩行者優先です。歩く人を邪魔しないよう降りたら如何ですか」と言うと、「あなた何様! 警察に行きましょうか!」と声を荒げる。ため息。「じゃあ、行きましょうか」と応じる。僕は道交法63条の4第2項にどう規定されているか知っているが、別段それを持ち出すつもりはない。さて、道交法をもちださずにどうスマートに話しを付けたものかと考えながら、交番のある方向へ自転車に乗ったままの彼女と歩いた。すると、僕がまったく動じた様子がなく交番方向へ歩くのに呆れたのか、角を曲がれば交番が見えるところまで来ると、彼女は身を翻すように走り去って行った。相手が女性だから追いかけなかったのは、ジェンダー・バイアスがかかっていたかもしれない。

自転車が歩道を我が物顔で走るようになったのは、道交法が改正されて、「車道又は口中の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」には、「通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる」なんて条項が加わってから著しくなった感じがする。この場合でも同法によれば、「自転車が歩道を通行する場合は、車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければならない」のが原則であることには変わりはない(第63条の4)。

自転車に乗ると歩行者が道を譲るのが当然に思われるのだろうか。そういえば、ハンドルを握ると普段の振る舞いからは想像もできないような汚い言葉を吐くような人は少なくない。先日も助手席に乗っていて、「ほらほら、そこの車、さっさと行きやがれ!」と初老の女性がののしるのを耳にした。

僕は一昨年まで30年近く、ダンプなどが時速60km以上でバンバン走っているバイパスを片道6km自転車でよく往復していた。その間、車道が冠水して走れないときを除いて歩道を走ったことはない。確かに怖いことも少なからずあった。

自転車が歩道を走ることを例外的であれ認めるのではなく、きちんとした自転車専用の道路を造るべきだろう。そして要所要所に大きな公設の駐輪場を設ける。そうすれば都内の自動車は随分に減らすことができるだろうと思う。トヨタ、日産、ホンダの声の方が大きく、自転車メーカーの声(カネの力)が弱いだけのことなのか。